広島古民家再生物語

其の十九 本郷の家

本郷の家 ある古民家にやって来た。 連絡があったのは、この家の持ち主ではなく隣の家のご主人だった。
話を聞くと、ご主人は古民家が好きで、隣の民家が空き家になったら譲り受けると言う。
えっ?「空き家になったらと言うことは、まだ住まわれている言うこと?」。
そうだったのです、まだお年寄りの方が一人で住まわれていました。
本郷の家 と言うことで今回は下見と言うことでした。 外観から見ると築百数十年は経つ茅葺屋根に波トタンを被せた民家で、裏に回って見ると廃墟状態です。 屋根と壁は荒れはて、今にも倒れるかと言うものでした。
何年先の再生工事かは解らないがそれまでこの民家は持つのだろうか?と言う建物でした。
内部はどうなっているだろうか?見せてもらえるらしい。
本郷の家 中にお邪魔しました。思った通りの小さい部屋がいくつもある田の字型の内部でした。
しかし、内部も思った通り、家は傾き柱は下がり、襖も反り動かない状態でした。
私は、口にはしませんでしたが、一体何にこの建物は倒れず耐えているのかと言う状態でした。
疑問を残し今日は一通り見せて頂き帰ることにしました。
本郷の家 数年が経ち一本の電話がありました。
本郷の家の方でした。
あの家を譲り受けて自分で解体をしたところ家が倒れそうなので何とかしてくれと言う内容でした。
私はすぐに伺い外見から母屋の横の物置が無くなっているだけで、何が倒れそうなのか解りませんでした。
本郷の家 そして中に入って私はビックリしました。
なんと天井や床、建具まで全てが無くなり今倒れてもおかしくない状態でした。
私は思ってもいなかったことで、慌てて出直して状態を確認しながら補強を始めました。
本郷の家 重要な数本の柱の足元も白蟻に食べられて柱とは言えない状態でした。
柱に負荷がかからないようにジャッキアップをして、耐震補強にたくさんの筋交いを入れ、やっと全てが完了しました。
しかし、先走り解体と知識や状態が解らない解体は怖いことだと思いながら本郷の家を後にしました。
本郷の家 本当は、プランを決めている間も、あの状態で建物を維持すのも心配でしたが、いよいよ本当の解体が始まりました。
瓦を剥し土壁を落とすと、思った以上の状態でした。
解体途中に夕立が突如来た時、どこからともなく大量の羽蟻が飛び立ちました。
今でも白蟻がどこかにいるのでしょう。
本郷の家 解体が終わると再度建物の補強をした後、建物の数ヶ所をジャッキアップして大半の柱を宙に浮かせ基礎工事に取り掛かります。
土を鋤取り砕石を敷き転圧、防湿シートを敷き詰めた後、鉄筋の配筋が終わりいよいよ明日はコンクリート打ちです。
本郷の家 今日は、朝早くから基礎工事のコンクリート打ちが始まりました。
巨大な蛇のようなポンプ車のホースを持込み、そのホースの先からは、勢い良くコンクリートが出てスタートしました。
数人の職人さんが出て来たコンクリートを均し始め、数時間で全て打ち終りました。ポンプ車の役目は大です。
本郷の家

先日打ったコンクリートも乾いたようです。
まだたくさんのジャッキは残った状態。
 

これから1個1個ジャッキが抜かれ、柱の補強が始まります。

あのグラグラで心配をしていた建物もここまで来たら少し安心ですが、でもまだ気は抜けません。

本郷の家

ここからは、大工さんの仕事です。
当初桁と柱は残して下地を作って瓦を葺く計画でしたが、あまりの状態の悪さで桁と柱は全て取替ることに変更しました。
大工さんは大変ですが、ここまでしておけば建物の心配をすることは無いと思います。